シェイド(Shade)は、主に古代神話・古典文学において登場する死者の魂・影・霊的存在を指す言葉です。今日のファンタジー作品では、しばしば「実体を持たない霊体モンスター」として登場しますが、そのルーツは非常に古く、神話・文学・哲学にまで遡る深い存在です。
◆ シェイドの語源と基本的意味
- 語源:
- 英語の「shade」はもともと「影」「陰」を意味する。
- ここから転じて「死者の影=霊魂、幽霊」という意味で用いられるように。
- 文学的意味:
- 特に古典文学(ホメロス、ダンテ、シェイクスピアなど)において、「shade = 死者の魂」として頻出。
◆ 古典神話における「シェイド」
1. ギリシャ神話
- 冥府(ハデス)にいる死者たちの霊が「シェイド」として語られます。
- **ホメロス『オデュッセイア』第11巻「ネキア(死者の国の書)」**では、オデュッセウスが冥府に降り、死者の霊(shades)と対話。
- 彼らは意識と記憶を保ちつつも肉体を持たず、血を与えなければ言葉を発することもできない。
- 影のように空虚で、触れることも叶わない存在。
→ このような**「影のように存在する死者」**こそが、最も古典的な「シェイド」の姿。
2. ローマ神話(ラテン文学)
- **ウェルギリウス『アエネーイス』**でも、英雄アエネアスが冥府に降り、死者たち(shades)と会話する場面がある。
- 「マンエス(Manes)」とも呼ばれる死者の霊魂も、同様に「シェイド」と訳されることがある。
◆ 中世・ルネサンス文学での扱い
- ダンテ『神曲』:地獄・煉獄・天国に登場する霊たちも「shades」として描写。
- シェイクスピア作品:『ハムレット』の父の亡霊など、死者の霊が「shade」と呼ばれることも。
→ 「成仏できない霊=陰(shadow)にとどまる存在」という解釈が広まっていく。
◆ 神話的象徴と意味
| 象徴 | 内容 |
|---|---|
| 死後の存在 | この世を離れた魂が「陰」として残る |
| 記憶・後悔 | 生前の記憶を持ち続けるが、変化できない存在 |
| 未練と未達 | 何らかの目的や未練を抱えて現世に留まる |
| 虚無と喪失 | 肉体を失い、触れられず、忘れられていく者たち |
◆ ファンタジーやゲームにおけるシェイド
現代のファンタジー作品やTRPG、ゲームにおいては、シェイドはしばしば敵対的な霊体モンスターとして登場します。
特徴的な描写:
| 属性 | 内容 |
|---|---|
| 形態 | 影のような姿/ぼんやりとした人型の黒い霧 |
| 攻撃方法 | 冷気・ネクロティックダメージ/生命力の吸収/精神攻撃 |
| 特性 | 実体がなく、物理攻撃が効きにくい/暗闇や死に強く結びつく |
| 背景設定 | 強い恨みを抱いた死者の魂/ネクロマンシーにより呼び出された影 |
◆ Dungeons & Dragons における「シェイド」
D&Dでは、「シェイド(Shade)」は以下のように二種類存在します:
1. モンスターとしてのシェイド
- アンデッド系の霊体モンスター。
- 暗闇を好み、生者の生命力を吸収する。
- 通常の武器ではほとんどダメージを受けない。
2. シャドウ・マジックに染まった種族(3.5版以降)
- 「Plane of Shadow(影の次元)」に適応・融合した人間やエルフ。
- ステルスに長け、魔法に強く、姿も影のように変化。
- シャドウ・ウィーヴにより力を得るが、人間性を失うことも。
◆ 他作品におけるシェイド
| 作品名 | シェイドの描写 |
|---|---|
| 『ロード・オブ・ザ・リング』 | 「死者の道」の幽霊軍団はシェイド的存在 |
| 『エルダースクロールズ』シリーズ | 幽霊・影・魂の残滓として登場 |
| 『ファイナルファンタジー』シリーズ | シャドウ、ゴースト、レイスなどと混在しつつ登場 |
| 『MTG(マジック・ザ・ギャザリング)』 | 黒マナに属する、力を蓄える影のクリーチャー |
◆ シェイドの創作での活用例
- 未練ある死者の物語性:プレイヤーや登場人物の過去と強く絡められる。
- 影から襲いかかる恐怖の象徴:恐怖演出における“見えない敵”として効果的。
- 倫理と呪いの問い:「彼らは本当に倒されるべきなのか?」といった道徳的葛藤を生む。
◆ まとめ:シェイドとは?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 起源 | 古代ギリシャ・ローマ神話の死者の霊 |
| 性質 | 実体を持たない、影のような魂 |
| 象徴 | 死、未練、虚無、記憶、恐怖 |
| 現代的解釈 | 霊体モンスター、ネクロティックな存在、影に潜む敵 |
| 文化的意義 | 「死後も残る影」として、人間の死生観を映す存在 |

