オネイロイ/Oneiroi

1. オネイロイとは?

オネイロイ(Oneiroi, ギリシャ語: Ὄνειροι)は、ギリシャ神話に登場する**「夢」の神格化された存在たち**です。オネイロイは単独の神ではなく、集合的な霊的存在として語られることが多いのが特徴です。

彼らは夜ごとに人間のもとへ訪れ、夢を通じてメッセージを伝えたり、未来を予見させたりする役割を持っていました。神話ではしばしば、神々の意志を伝える「使者」や、吉夢・凶夢をもたらす存在として描かれています。

オネイロイは冥界(あるいはニュクスの領域)に住み、ゼウスやハデスの命令を受けて、人々に夢を見せるとされました。特にホメロスやヘシオドスの叙事詩、オウィディウスの『変身物語』などにその名が登場します。

2. オネイロイの起源と家系

2.1. 親神と出自

オネイロイの出自にはいくつかの異説がありますが、主要な神話では以下のように語られています。

• ニュクス(Nyx, 夜の女神)の子

• ヘシオドスの『神統記』では、オネイロイは原初の夜の女神ニュクスの子供たちとされます。

• ニュクスは、カオス(混沌)から生まれた原初神の一柱であり、彼女の子供にはタナトス(死)、ヒュプノス(眠り)、エリス(不和)などがいます。

• オネイロイはこの中でも夢の神々とされ、人々の夢を司る役割を持っていました。

• ヒュプノス(Hypnos, 眠りの神)の子

• 一部の伝承では、オネイロイは眠りの神ヒュプノスの子供たち、あるいは彼と兄弟であるとされています。

• 眠りと夢は密接な関係にあるため、ヒュプノスとの関連性は非常に強いものとなっています。

3. オネイロイの種類と役割

オネイロイは「夢」の霊的存在の総称ですが、個別に名前を持つオネイロス(Oneiros, 単数形)も存在します。

3.1. 代表的なオネイロイ

オウィディウスの『変身物語』では、特に3柱のオネイロイが詳しく描写されています。

① モルペウス(Morpheus) – 「形作る者」

• 夢の中で人間の姿をとることができ、最も有名なオネイロス。

• 彼はゼウスや他の神々の意志を人間に伝える夢を見せる役割を持っていた。

• 「モルペウス」という名前は、のちにラテン語を経由して「モルヒネ(鎮静剤)」の語源となった。

② フォベトール(Phobetor, イクセロスとも) – 「恐怖をもたらす者」

• 夢の中で動物や怪物の姿をとるオネイロス。

• 悪夢や恐ろしい幻影を人々に見せる役割を持つ。

• 彼の名前「フォベトール」は、「フォボス(恐怖)」の語源とされる。

③ ファンタソス(Phantasos) – 「幻想を生み出す者」

• 夢の中で無生物(岩、木、海など)の姿をとる。

• 奇妙な夢や非現実的なビジョンを見せる役割を持つ。

• 「ファンタジー(幻想)」の語源ともされる。

4. オネイロイの住処と活動

4.1. 冥界の門

オネイロイは冥界に住んでおり、そこから夜ごとに人間のもとへ夢を届けると考えられていました。彼らの住処には、**「2つの門」**があるとされています。

① 象牙の門(Gate of Ivory)

• 虚偽の夢(False Dreams)が通る門。

• ここから出てくる夢は幻想や嘘が多く、現実にはならないものとされた。

② 角の門(Gate of Horn)

• 真実の夢(True Dreams)が通る門。

• ここから出てくる夢は、予知夢や神の意志を示す夢であり、現実になる可能性が高いとされた。

ホメロスの『オデュッセイア』では、ペーネロペー(オデュッセウスの妻)が「どちらの門を通る夢かによって、その真偽が分かる」と語る場面があります。

5. オネイロイの神話と登場する物語

5.1. 『オデュッセイア』におけるオネイロイ

• ペーネロペーが夫オデュッセウスの帰還を夢に見るが、「これはどちらの門から来た夢なのか」と疑うシーンがある。

• この場面では、夢の二面性(真実と虚偽)が重要なテーマとなっている。

5.2. 『変身物語』におけるオネイロイ

• モルペウスが登場し、眠る人間の前に現れて神々の意志を伝える役割を担う。

• 彼はしばしばゼウスの意志を伝える使者として描かれる。

6. オネイロイの現代文化への影響

6.1. 文学と映画

• 「モルペウス」という名前は、映画『マトリックス』のキャラクター名としても使われている。

• **『サンドマン』(The Sandman, DCコミックス)**では、オネイロスに基づいたキャラクターが登場する。

6.2. ゲームとアニメ

• 『ペルソナ』シリーズ:モルペウスやフォベトールが登場。

• 『ファイナルファンタジー』シリーズ:夢に関連する魔法や召喚獣として登場することがある。

7. まとめ

• オネイロイはギリシャ神話における「夢」の神格化された存在たち。

• ニュクスやヒュプノスの子供とされ、冥界に住んでいる。

• 夢には「真実の夢」と「虚偽の夢」があり、それぞれ異なる門から現れる。

• 代表的なオネイロイには、モルペウス、フォベトール、ファンタソスがいる。

• 現代の文学や映画、ゲームにも影響を与えている。

オネイロイは、古代ギリシャ神話における夢の概念を象徴する存在として、今もなお多くの作品に登場し続けています。

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