モルモー/Mormo

1. モルモーとは?

モルモー(Mormo, Μορμώ)は、古代ギリシャ神話に登場する恐ろしい女性の怪物または悪霊であり、特に子供を脅かす存在として知られています。モルモーはナイトメア(悪夢)の象徴であり、母親が子供をしつける際に「悪い子にはモルモーがやってくる」と語り聞かせるような存在でした。

モルモーは、しばしば**「モロイ」(Mormolyceia, Mormolyceia)**と関連付けられることがあり、これはギリシャ神話における吸血鬼的な存在の一種です。また、モルモーはラミアやストリックス(Strix)といった他の恐ろしい怪物とも類似しており、子供を捕らえ、食べる怪物として恐れられました。


2. モルモーの起源と神話

2.1. 古代ギリシャの伝承

モルモーに関する記述は、古代ギリシャの文学作品や民間伝承に散見されます。モルモーは、特に子供を脅かす怪物として登場し、母親が「夜に悪いことをするとモルモーが来る」と言って子供を寝かしつけるのに使われたとされます。

この伝承は、現代の「ブギーマン(Boogeyman)」に相当するものであり、子供たちに恐怖を与えることで、規律を守らせるための物語として用いられました。

2.2. ヘカテーとの関係

モルモーは、ギリシャ神話の闇の女神である**ヘカテー(Hecate)**の従者としても描かれることがあります。ヘカテーは冥界と魔術、夜の闇を支配する女神であり、彼女に仕える恐ろしい霊や怪物たちの中にモルモーも含まれていたと考えられています。

ヘカテーの一団には、ラミアやエンペウサ(Empusa)といった他の怪物も属しており、これらはしばしば吸血鬼や夢魔のような存在として語られます。モルモーもまた、その一員として夜を徘徊し、人々を恐怖に陥れる存在だったのです。

2.3. モルモーと吸血鬼伝説

ギリシャ神話には、モルモーが人間の血を吸う存在であったという伝承もあります。これは後のヨーロッパにおける吸血鬼伝説に影響を与えた可能性があり、ラミアやストリックスといった存在と混ざり合うことで、後世の「ヴァンパイア」像の形成に寄与した可能性があります。

モルモーの特徴として、子供の血を好むとされる点があり、これが中世ヨーロッパの吸血鬼伝説の原型の一つになったと考えられています。


3. モルモーの特徴と姿

3.1. 変幻自在の怪物

モルモーは一つの決まった姿を持たないとされ、しばしば「変身能力を持つ怪物」として語られます。特に、獲物を騙すために美しい女性の姿を取ることができるとされており、これはラミアやエンペウサとも共通する特徴です。

3.2. 夜の闇に潜む恐怖

モルモーは日中には現れず、夜になると活動を開始するとされています。特に、眠っている子供や一人で夜道を歩く人々を狙い、彼らを連れ去ったり、血を吸ったりするという伝承があります。

3.3. 動物的な特徴を持つ

一部の記述では、モルモーは鋭い牙を持ち、爪が長く、時には鳥のような足を持つとされています。この特徴は、ラミアやストリックスといったギリシャの他の怪物とも類似しており、モルモーがこれらの怪物の系譜に属していることを示唆しています。


4. モルモーの影響と類似の存在

4.1. 他のギリシャ神話の怪物との関連

モルモーは、以下のような怪物たちと共通点を持っています。

  • ラミア(Lamia):子供を食べる女性の怪物。美しい女性の姿に変身し、人間を誘惑する能力を持つ。
  • エンペウサ(Empusa):ヘカテーの従者の一人で、獲物を騙すために変身する能力を持つ。
  • ストリックス(Strix):血を吸う怪鳥で、吸血鬼伝説の原型とされる存在。

モルモーは、これらの怪物と多くの共通点を持つため、古代ギリシャでは「夜の恐怖」を象徴する存在として人々の記憶に刻まれていました。

4.2. モルモーとブギーマンの類似性

モルモーの伝承は、世界各地の「ブギーマン(Boogeyman)」の伝説とよく似ています。ブギーマンは、**「悪いことをする子供をさらう怪物」**として語られることが多く、モルモーの役割と一致します。

また、モルモーが「眠る子供を襲う」とされる点も、悪夢を引き起こす怪物としての側面を強調しており、ナイトメアの概念とも関連があると考えられます。

4.3. ヴァンパイア伝説との関係

モルモーが子供の血を吸うという伝承は、後のヴァンパイア(吸血鬼)の伝説と強く結びついています。特に、ギリシャ神話における吸血鬼的な存在であるストリックスやラミアと同様に、モルモーもまた「血を求める夜の怪物」としての性質を持っていたと考えられます。

この影響は、中世ヨーロッパに伝わり、後の吸血鬼伝説の形成に寄与した可能性が高いです。


5. まとめ

モルモーは、古代ギリシャにおける恐ろしい怪物であり、特に子供を脅かす存在として語られてきました。彼女は夜の闇に潜み、眠る子供を襲い、時には血を吸う恐ろしい存在とされています。

また、ヘカテーの従者としても描かれることがあり、ギリシャ神話におけるナイトメアや吸血鬼伝説の起源の一つとも考えられています。その影響は、現代のブギーマン伝説やヴァンパイアの神話に受け継がれ、多くの恐怖の象徴として残っています。

モルモーの伝承は、単なる怪物の物語ではなく、人々の夜の恐怖や闇に対する畏怖の象徴であり、その存在は今もなお神話研究の分野で興味深いテーマとなっています。

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