モードレッド(Mordred)は、アーサー王伝説における裏切り者の騎士、あるいはアーサー王の息子または甥として登場し、王国の滅亡に深く関わる悲劇と破滅の象徴的存在です。彼の物語は、忠誠と裏切り、血縁と運命の複雑なテーマを描いています。
◆ 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | モードレッド(Mordred)/モルドレッド(Mordred) |
| 出典 | アーサー王伝説(中世のブリテン・フランス文学) |
| 役割 | アーサー王の敵、裏切り者、最終戦争の導火線 |
| 関係性 | アーサー王の息子または甥、モーガン・ル・フェイやモルゴースの子 |
| 象徴 | 裏切り、宿命、血の罪、崩壊の予兆 |
◆ 出自と誕生の謎
モードレッドの出自は作品によって異なりますが、共通して**「禁忌の誕生」**というテーマを含みます。
| 出典 | 出自のバリエーション |
|---|---|
| トマス・マロリー『アーサー王の死』 | アーサー王と異母姉モルゴースの間にできた息子(近親関係) |
| 初期ウェールズ伝承 | 甥として登場。母はアーサーの姉妹モーガン・ル・フェイとされることも |
| フランス文学など | 時に義理の息子や王の不忠臣として描かれる |
この血の呪い・近親の罪が、のちの悲劇へとつながっていきます。
◆ モードレッドの裏切りとカムランの戦い
モードレッドの最大の役割は、アーサー王に対する裏切りと、それに続く**カムランの戦い(Battle of Camlann)**でのアーサーとの最終決戦です。
◉ 裏切りの経緯
- アーサー王が大陸遠征(または聖杯探索など)で不在中、モードレッドは摂政として王国を預かる。
- しかし、アーサー王の死を偽り、自らを王として即位。
- アーサーの妃グィネヴィアと結婚しようとする(彼女は逃亡または修道院に逃れる)。
- アーサー王は急遽帰国し、決戦が避けられなくなる。
◆ カムランの戦い(Camlan)
- モードレッドとアーサー王の最後の激突の場。
- 両軍は和平交渉を試みるも、誤解や不信が原因で戦闘に突入。
- 伝承では、アーサーがモードレッドを槍で貫くが、同時に致命傷を負う。
- アーサー王はモードレッドとの戦いによって自らの終焉を迎え、アヴァロンへ旅立つ。
この戦いは、ブリテン王国の崩壊、円卓の騎士団の終焉、神話的時代の幕引きを象徴します。
◆ 象徴としてのモードレッド
| 象徴 | 解釈 |
|---|---|
| 裏切りの象徴 | 王の血族にして、王国を滅ぼした者 |
| 業(ごう)の体現者 | アーサーの罪(近親の子)という業が現れた存在 |
| 終末の預言者 | 王国の崩壊を招く預言的存在(しばしば予言される宿命の男) |
| カイン的存在 | 神話的に言えば、アーサーという「父(神)」に反逆した「カイン」のような存在 |
◆ モードレッドの性格と描写
作品によって、モードレッドの性格は変化します。
| 描写 | 内容 |
|---|---|
| 悪意に満ちた野心家 | 欲と野望に動かされた裏切り者(多くのフランス系物語) |
| 誤解されし哀しき者 | 宿命に抗えず、運命に巻き込まれた悲劇の人 |
| 冷酷な策士 | グィネヴィアの不倫を暴露し、王国を混乱に陥れる知略家(トマス・マロリー) |
| 宿命の騎士 | 王の血を引きつつ、王を破壊することで「時代の終わり」を告げる役割を持つ存在 |
◆ 文学・現代文化への影響
- 多くの文学・映画・ゲーム作品で「裏切りの騎士」や「黒騎士」として登場。
- 例:ゲーム『Fate』シリーズ、アニメ『七つの大罪』、映画『キング・アーサー』など。
- 「宿命に抗えぬ者」「父を殺す子」「終わりの騎士」という神話的パターンの象徴として用いられる。
◆ まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | モードレッド(Mordred) |
| 出自 | アーサー王の息子または甥(近親関係が多い) |
| 役割 | 裏切り者、王国の滅亡の引き金、終末の象徴 |
| 象徴 | 裏切り・宿命・罪の報い・王権の終焉 |
| 結末 | アーサー王との相討ちで戦死、伝説の幕引きを担う |
モードレッドは単なる「悪役」ではなく、運命と血の因果によって生まれ、王と国の終焉を告げる象徴的な存在です。彼の存在によって、アーサー王伝説はより深く悲劇的で神話的な色彩を帯びています。

