ロア(Lwa または Loa)は、ハイチ・ヴードゥー(Voodoo)やニューオーリンズ・ヴードゥーにおける精霊や神格のことです。
彼らは直接の創造神ではなく、神と人間の仲介者としての役割を担う存在です。
ヴードゥー教では、信者はロアを通じて神や祖先と繋がることができると信じられています。
それぞれのロアは独自の性格や役割を持ち、日常生活のさまざまな側面を司ります。
ロアの起源と背景
ロアの信仰は、アフリカのヨルバ族やフォン族の神話に起源を持ちます。
特に、現在のベナンやナイジェリアの宗教で信仰されていたオリシャと呼ばれる神々が、ヴードゥーのロアへと発展しました。
18世紀、奴隷貿易によって多くのアフリカ人がカリブ海のハイチやルイジアナへと連行されました。
その際、彼らの宗教はカトリックの影響を受け、ヴードゥー教として独自の形態を持つようになりました。
- カトリックの聖人とロアが同一視されることもあり、表向きには聖人を崇拝しながら、実際にはロアを祀るという形態も見られました。
- このような**シンクレティズム(宗教融合)**によって、ヴードゥー教は発展しました。
ロアの階層と分類
ロアは、役割や性質に応じていくつかの主要なグループに分類されます。
それぞれのロアは精霊の家族の一員として存在しています。
◇ 1. ラダ・ロア(Rada Loa)
- 善良で優しい性質を持つロアが多く、平和や調和を象徴します。
- アフリカ由来のロアが多く含まれます。
- 例:
- ダンバラ:蛇の姿をした創造の神。
- アイザン:市場や商業を司る女神。
◇ 2. ペトロ・ロア(Petro Loa)
- 情熱的で荒々しい性格を持つロアたちで、炎や戦争と関連しています。
- 奴隷時代の苦しみから生まれた存在とされています。
- 例:
- エルズリー・ダントール:戦士の女神で、母性や復讐を象徴。
- シミビ:水を司る精霊。
◇ 3. ゲーデ・ロア(Ghede Loa)
- 死と再生を司るロアの一族。
- 墓地の守護者であり、死者の魂を導く役割を持ちます。
- 例:
- バロン・サムディ:死者の王で、墓地の門を守る。
- ママン・ブリジット:女性の死者の守護者。
◇ 4. コンゴ・ロア(Kongo Loa)
- コンゴ王国に起源を持つロアたちで、力や勇気を象徴します。
- 水や森林を司ることが多いです。
◇ 5. ナゴ・ロア(Nago Loa)
- ヨルバ族の神々に由来し、主に戦士や英雄の神格が含まれます。
- オグン:鉄と戦争の神として信仰されています。
ロアの召喚と儀式
ヴードゥー教の儀式では、ロアを召喚し、その存在を感じることが重要とされています。
◇ 1. ヴェヴェ(Veve)
- ロアを召喚するために、地面や布の上に描かれる神聖なシンボルです。
- 各ロアには固有のヴェヴェが存在し、それを描くことでロアを呼び寄せます。
◇ 2. ドラムとダンス
- ドラムのリズムはロアを呼び覚ます重要な要素です。
- 祭司や信者は、ロアに捧げるダンスを踊りながら、霊的な状態へと入ります。
◇ 3. 憑依
- ロアが降臨すると、参加者の中の一人に憑依します。
- 憑依された者は、ロアの声や仕草を通して、神託を伝えるとされています。
◇ 4. 捧げ物
- ロアは食べ物や飲み物、ラム酒、タバコなどを好むとされ、祭壇に供えられます。
- ロアの性格に応じた捧げ物をすることで、彼らの機嫌を取ることが重要です。
ロアの役割と影響
ロアは人間の生活に深く関わり、日常の問題解決や願望の成就を助ける存在です。
信者は、病気の治癒、恋愛の成就、商売繁盛、家庭の平和など、さまざまな願いをロアに託します。
また、ロアは道徳的な指導者でもあり、信者に対して正しい道を示します。
ただし、ロアを怒らせたり不敬な行為をした場合、罰を受けることもあるとされています。
まとめ
- ロアは、ヴードゥー教における神格や精霊で、人間と神の仲介者として存在します。
- ラダ・ロア、ペトロ・ロア、ゲーデ・ロアなど、性質や役割によって分類されています。
- 信者は儀式や祈りを通じてロアと繋がり、日常の悩みを解決したり、指針を求めたりします。
- ロアは時に厳しく、時に優しく、信者の生活に影響を与え続ける存在です。
ヴードゥーにおけるロアの信仰は、ただの偶像崇拝ではなく、人間と霊的世界の共存を象徴しています。

