**クリシュナ(Krishna)**は、インド神話において最も重要で広く崇拝されている神の一柱であり、ヴィシュヌ神の化身(アヴァターラ)のひとつとして知られます。ヒンドゥー教の聖典や叙事詩『マハーバーラタ』『バガヴァッド・ギーター』『シュリーマド・バガヴァタム』などに登場し、神格と人間性を兼ね備えた理想の神・王・友・恋人として描かれています。
■ 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | クリシュナ(Krishna、「黒い者」「魅了する者」の意) |
| 種類 | 神、英雄、ヴィシュヌの化身(第8番目) |
| 両親 | ヴァスデーヴァ(父)とデーヴァキー(母) |
| 生誕地 | マトゥラー(北インド) |
| 象徴 | フルート、孔雀の羽、青い肌、牧童、王子、戦車の御者 |
■ クリシュナの神話的生涯
1. 【神秘的な誕生】
- クリシュナは邪悪な王カンサを滅ぼす予言の子として生まれ、誕生直後に父によって安全な地(ゴークラ)へと運ばれます。
- 幼少期は牧童として育てられ、多くの奇跡を起こす(毒蛇カーリヤを退けるなど)。
2. 【牧歌的な青春とゴーピーとの恋愛】
- クリシュナはフルートの名手としてゴーピー(牛飼いの乙女)たちを魅了し、とりわけラーダーという女性との恋愛が有名。
- これらの逸話は「神と魂の愛」を象徴する神秘的かつ詩的な象徴とされる。
3. 【悪王カンサの討伐】
- 成長後、マトゥラーに戻ってカンサを倒し、母デーヴァキーを解放。
- この事件をもって、人間界での「悪の浄化者」としての役目が強調される。
4. 【マハーバーラタとバガヴァッド・ギーター】
- クリシュナは叙事詩『マハーバーラタ』の中で、パーンダヴァ五兄弟の盟友・戦略家として登場。
- 戦争(クルクシェートラの戦い)の直前、主役アルジュナに哲学と神の教えを説いたのが『バガヴァッド・ギーター』。
- ここでは、**宇宙的な神としての姿(ヴィシュヴァルーパ)**を現し、「行為の義務」「カルマ」「信仰の道(バクティ)」などを語る。
5. 【晩年と死】
- クリシュナはドワーラカという海辺の都市国家の王として統治。
- 最期は、誤って狩人に射られ致命傷を負い、人間としての生涯を終える。
- 彼の死をもって「カーリ・ユガ(暗黒の時代)」が始まるとされる。
■ クリシュナの象徴と意味
| 象徴 | 意味 |
|---|---|
| 青い肌 | 無限性、宇宙的存在、神の神秘性 |
| フルート | 魂を呼び覚ます神の声、愛と調和の象徴 |
| 牛と牧童 | 自然との調和、慈愛、無垢な精神 |
| 戦車の御者 | 内なる導師、自己のコントロール |
| ラーダーとの恋 | 神と人間の魂の神秘的な愛の象徴 |
■ 哲学的な役割(バガヴァッド・ギーター)
『バガヴァッド・ギーター』においてクリシュナは、
- 「真理を教える神」
- 「魂の導き手」
- 「すべての存在の根源」
として語られます。彼の教えはヒンドゥー哲学の核心をなし、「カルマ・ヨーガ(行為の道)」「バクティ・ヨーガ(信愛の道)」「ジュニャーナ・ヨーガ(知識の道)」の三道を説きます。
■ 信仰と文化的影響
- バクティ運動の中心的存在:クリシュナへの献身的信仰(バクティ)は中世インドで盛んとなり、今もなお続く。
- 祭り:「ジャナマーシュタミー(誕生祭)」では、インド中で彼の誕生日を祝う。
- 芸術・文学:絵画、舞踊、詩歌(特に『ギーター・ゴーヴィンダ』)でクリシュナは繰り返し称えられる。
- 現代でも信仰厚い:国際クリシュナ意識協会(ISKCON)は全世界に信者を持つ。
■ まとめ:クリシュナとは何者か?
クリシュナは…
- ヴィシュヌ神の化身でありながら、人間味ある神
- 恋人・戦士・王・導師という多面的存在
- 哲学的真理と愛の神秘を象徴する存在
- 人類の魂を導く宇宙的教師(神我)
として、信仰と神話、哲学と芸術をつなぐ万能の神とされています。

