ホブゴブリン(Hobgoblin)は、主にイギリスやスコットランドの民間伝承に登場する妖精的存在で、今日のファンタジー作品では「ゴブリンの上位種」としてモンスター的に扱われることが多いです。しかし本来は**いたずら好きな家の精霊(ハウス・スピリット)**であり、善悪の両面を持つ複雑なキャラクターです。
以下に、ホブゴブリンの起源・特徴・神話的役割・現代ファンタジーへの影響を包括的に解説します。
◆ 起源と語源
- 語源:
- 「Hob」は中世英語で**「Robert(ロバート)」の愛称**(親しみのある呼び方)。
- 「Goblin」はフランス語の「gobelin(悪戯好きの小鬼)」に由来。
- 合成語「Hobgoblin」は**「親しみやすい小鬼」あるいは「家にいるちょっとした悪戯者」**を意味します。
◆ 民間伝承におけるホブゴブリン
1. 性格と行動
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 家に住む妖精(ハウス・スピリット) | ブラウニー、コボルト、ドモヴォーイなどと同系統 |
| いたずら好きだが、基本的に善意 | 人間をからかうが、家事を手伝うことも |
| 怒らせると厄介 | 粗末に扱ったり無礼を働くと、怒って家を荒らすことも |
| 好物は牛乳やパン | 夜にこっそり食べられるように置いておくのが風習だった |
→ つまり「人と共存できる妖精」であり、モンスターというより精霊的存在。
2. 地域別伝承
- イングランド北部・スコットランド:
- 家に仕える善良な妖精(ブラウニーに近い)。
- 服や褒美を与えると去ってしまう(フェアリールールの一種)。
- ウェールズ地方:
- 「Bwbach(ブバッハ)」というホブゴブリン的存在がおり、無神論者や怠け者を懲らしめる。
◆ 神話的な象徴と役割
| 象徴 | 意味 |
|---|---|
| 家の精霊 | 家庭と秩序の守り神的役割 |
| いたずらと混乱 | 日常の小さな不条理・混乱の説明 |
| 善と悪の曖昧さ | 善悪では割り切れない人間的性格を反映 |
ホブゴブリンは、人間と妖精の中間的存在として、**「親しみのある異界」**を象徴します。
◆ 文学と文化におけるホブゴブリン
1. シェイクスピアの登場例
- 『夏の夜の夢(A Midsummer Night’s Dream)』:
- 有名な妖精**パック(Puck)**が「ホブゴブリン」とも呼ばれている。
- 劇中でこう呼ばれる: “Thou speak’st aright; I am that merry wanderer of the night. I jest to Oberon and make him smile…”
→ パック=ホブゴブリン=いたずら好きで陽気な妖精
2. 思想・哲学における比喩
- アメリカの哲学者ラルフ・ワルド・エマーソンは、「Consistency is the hobgoblin of little minds(つまらぬ者にとっての一貫性は、ホブゴブリンのようなものだ)」という名言を残しており、「ホブゴブリン=しつこくまとわりつく厄介な考え」という比喩表現にも使われた。
◆ 現代ファンタジーにおける変化
1. Dungeons & Dragons(D&D)
- ホブゴブリンは軍国主義で規律を重んじるゴブリン種の上位存在に再構成。
- 特徴:
- 背が高く、人間に近い体格
- 統率力・武術に優れた軍隊文化
- ゴブリン(下級)、バグベア(怪力系)との三位一体構造
2. その他の作品
- **『ハリー・ポッター』**シリーズ:
- ゴブリン銀行の行員など、妖精たちはしばしばホブゴブリン的性質を持つ。
- ゲーム(Skyrim、Pathfinder、Witcherなど):
- ホブゴブリンはゴブリンより強く、しばしば敵軍の中核を成す戦士として描かれる。
◆ ホブゴブリンの分類まとめ
| 分類 | 伝承的ホブゴブリン | ファンタジーRPGのホブゴブリン |
|---|---|---|
| 出身 | イギリスの民間伝承 | ゲーム・ファンタジー文学 |
| 性質 | 親しみのあるいたずら妖精 | 軍国的で強靭なゴブリン族 |
| 主な行動 | 家事の手伝い、いたずら | 武力行使、敵対種族 |
| 関連 | パック、ブラウニー、コボルト | ゴブリン、バグベア |
◆ まとめ:ホブゴブリンとは?
- 原点:民間伝承における家の精霊・いたずら妖精
- 性質:善にも悪にもなりうる、曖昧で人間的な存在
- 現代的解釈:ゴブリン系の強化種、秩序あるモンスター
- 文化的意義:人間の日常や心理を象徴する“身近な異界”

