ノール(Gnoll)は、現代ファンタジー作品で広く知られているハイエナの頭を持つ獣人型モンスターですが、その起源は意外にも古く、神話・伝説、そして幻想文学から発展してきた存在です。
以下に、「ノール」というモンスターの神話的背景・文学的起源・ファンタジー的進化を含めて、詳細に解説します。
◆ ノール(Gnoll)の語源と起源
1. 語源
- 「Gnoll(ノール)」という言葉は、「Gnome(ノーム)」+「Troll(トロール)」の合成語として、19世紀末に作られたとされます。
- 最初の登場は、1912年のローズマリー・サトクリフの前身とも言える、イギリスの作家ロード・ダンセイニの短編『How Nuth Would Have Practised His Art upon the Gnoles』に現れます。
- この「Gnole(のちのGnoll)」は、人間を喰らう森の中の恐ろしい存在として描写されています。
- ハイエナとは関係のない存在で、「森の怪異」「知性ある原始の怪物」のような立ち位置。
◆ Dungeons & Dragons(D&D)におけるノールの再定義
2. ノール=ハイエナ型獣人の誕生
- 1970年代、D&Dの初期版において、「ノール」は**ハイエナに似た顔を持つ獣人(hyena-men)**として再定義されます。
- この時点から、ノールは以下のような特徴を持つようになります:
◆ 特徴:
- 二足歩行のハイエナ型獣人
- 残虐・野蛮・無慈悲
- 通常は邪悪な神「イーンノグフ(Yeenoghu)」に仕える悪の種族
- 略奪・虐殺・拷問を好み、文明との相容れない存在として描写
◆ 社会構造:
- 主に部族単位で移動
- 弱肉強食の支配関係
- より強いリーダー(しばしばイーンノグフの祝福を受けたウォーロード)が支配
◆ 宗教的背景(D&D設定):
- イーンノグフ(Yeenoghu):ノールの主神であり、「獣のデーモン・ロード」
- 飢え・狂気・破壊の象徴
- ノールたちは彼の命に従い、飢えのままに殺戮を行う
- 宗教的儀式や人身供犠も行われる
◆ 神話的・文化的な影響要素
3. ハイエナのイメージ(アフリカ・中東の伝承)
ハイエナという動物そのものには、多くの文化的象徴が付随しています:
| 地域 | ハイエナに対する文化的イメージ |
|---|---|
| アフリカ(特にサハラ以南) | 邪悪な魔術師の化身、墓荒らし、死体を喰う獣 |
| アラブ圏 | 「人間を催眠術で誘い、喰う魔物」という伝承あり |
| エチオピア・ソマリ | 「ハイエナ男」「夜に人間に化けて狩りをする精霊」などの逸話 |
→ これらの伝承が、ノール=人喰い・死体漁り・獣性に満ちた存在というイメージの土台に。
◆ ノールの象徴性と物語上の役割
| 象徴 | 意味 |
|---|---|
| 獣性・野蛮性 | 理性を持たない純粋な暴力、文明の否定 |
| 群れ・略奪者 | 社会や秩序を破壊する外部の脅威 |
| 死・腐敗・飢え | 墓荒らし・屍肉を食う行動から連想 |
ノールは、単なるモンスター以上に、**「野蛮の象徴」「秩序に対する混沌」**という役割を物語世界で担います。
◆ ノールに似た神話的存在
| 名前 | 共通点 |
|---|---|
| アヌビス(エジプト神話) | ジャッカルの頭の神。死や葬儀の象徴だが、守護的 |
| スキュラ(ギリシャ神話) | 複数の獣を組み合わせた怪物。食人性あり |
| ウェンディゴ(北米伝承) | 飢えと狂気の象徴。人間を捕食する霊的存在 |
| ハイエナ男(アフリカ伝承) | 夜に変身して人を食う、ノールの直接的な原型的存在 |
◆ 現代作品への影響
ノールはD&Dを通して、数多くの作品に影響を与えています。
- ゲーム:
- 『バルダーズ・ゲート』『パスファインダー』『ドラゴンズドグマ』など多くのRPGで登場
- 小説:
- D&D公式小説のほか、ノールを主役にしたダークファンタジー作品も存在
- ビジュアル表現:
- 大柄、筋肉質、逆関節、ハイエナ顔、嗅覚と聴覚に優れる、などの共通モチーフあり
◆ まとめ:ノールとは?
ノール(Gnoll)は…
- 古代の「森の怪物」から発展したハイエナ型獣人
- ハイエナにまつわる恐怖・異質性・死のイメージを凝縮
- 文明の敵としての「獣性の化身」
- 特にD&Dにおいて、極めて体系化された種族的モンスター

