**布都御魂(ふつのみたま)**は、日本神話に登場する霊剣であり、天叢雲剣と同様に重要な役割を持つ神宝です。その名には「断つ」「断ち切る」という意味が込められており、神威を宿した剣として語られています。以下、布都御魂に関する神話や役割について詳しく解説します。
1. 布都御魂の由来と神話
布都御魂は、特に『日本書紀』や『古事記』において言及される剣であり、神々の戦いの中で重要な役割を果たします。
◇ 神武天皇の東征と布都御魂
布都御魂が最も有名なのは、神武天皇の東征の際の物語です。
• 神武天皇(カムヤマトイワレヒコ)は、九州を出発し、大和の地を目指しました。
• しかし、**長髄彦(ナガスネヒコ)**という強力な豪族の抵抗に遭い、戦況は不利に。
• 神武天皇の兄である**五瀬命(イツセノミコト)**は戦いで負傷し、命を落とします。
◇ 天神の加護と剣の授与
• 神武天皇は、敗戦の理由を**「天神の御心に背いたため」**と考え、熊野へ向かい神々に祈りを捧げました。
• その際、**天照大神(アマテラスオオミカミ)と高御産巣日神(タカミムスビノカミ)の意思を受けた武甕槌神(タケミカヅチノカミ)**が登場します。
• 武甕槌神は、彼自身が所有していた霊剣布都御魂を神武天皇に授けました。
◇ 剣の力による勝利
• 布都御魂の神威により、神武天皇は再び戦いに臨みます。
• 剣の加護を受け、神武天皇は長髄彦を打ち破り、大和を平定しました。
• この戦勝は「神の御魂が宿る剣」の威力を象徴するものとして語り継がれています。
2. 布都御魂の名の由来
**「布都」**とは、「力強い」「断つ」という意味を持ち、剣の神威や破邪の力を表しています。
**「御魂」**は、神霊や神の意志を指し、剣そのものが神格を持つことを示します。
つまり、布都御魂は「強大な神霊を宿した剣」を意味します。
3. 布都御魂と石上神宮
布都御魂は、神話の後、**石上神宮(いそのかみじんぐう)**に祀られることになります。
◇ 石上神宮の由緒
• 奈良県天理市に鎮座する石上神宮は、日本最古の神社の一つです。
• 物部氏が崇敬した神社であり、氏族の守護神として布都御魂が奉納されました。
• 現在も、石上神宮は布都御魂大神を主祭神として祀っており、剣に宿る霊威を象徴する聖地とされています。
4. 布都御魂と他の神剣との関係
◇ 布都御魂と布都斯魂(ふつしみたま)
• 『日本書紀』では、布都斯魂という剣も登場します。
• 布都御魂と同一視されることが多いですが、異なる剣として扱われることもあります。
• 両剣とも、武甕槌神の霊威を象徴する剣である点では共通しています。
◇ 天叢雲剣との違い
• 天叢雲剣は自然の脅威を鎮める力を持つ一方、布都御魂は武力を象徴し、戦の勝利をもたらす剣です。
• そのため、布都御魂は主に戦神の象徴として位置づけられています。
5. 布都御魂の象徴的な意味
布都御魂は、単なる武器ではなく、神霊の宿る存在として深い信仰を集めてきました。
• 戦勝祈願の象徴: 戦場での勝利を願う武士や武将たちにとって、布都御魂は守護の剣でした。
• 神威と正義の剣: 神武天皇が正義のもとに大和を平定した故事から、布都御魂は正義の象徴ともされています。
• 国家安泰の守護神: 国家の平安を祈る際にも、布都御魂の霊力に頼る信仰が根付いています。
まとめ
布都御魂は、日本神話において神武天皇を勝利に導いた神剣としての役割を果たし、その後は石上神宮に祀られて日本の歴史と深く関わってきました。
戦いの神威を宿し、国の平安と正義を象徴する布都御魂は、日本の神話と文化における重要な存在であり続けています。

