ベレロフォン(Bellerophon)は、ギリシャ神話に登場する英雄であり、特に有翼の神馬ペガサス(Pegasus)を乗りこなし、怪物キマイラ(Chimera)を討伐したことで知られる。彼の物語は、英雄の試練と栄光、そして過信による堕落という、神話における典型的なパターンを含んでおり、古代ギリシャ文学や芸術に多くの影響を与えている。以下では、ベレロフォンの生い立ち、冒険、そして最期について詳細に解説する。
1. ベレロフォンの生い立ち
1.1 名前の由来と出自
ベレロフォンの名は「ベレロス(Belleros)を殺した者」という意味を持つとされるが、ベレロスが具体的にどのような人物であったのかは不明である。彼はコリントス(Corinth)の王家に属し、ポセイドンの息子ともいわれるが、一般的にはグラウコス(Glaucus)王の子であり、祖父はシーシュポス(Sisyphus)であるとされる。
1.2 追放と放浪
ある時、ベレロフォンはコリントスで殺人を犯したとされ(それがベレロスの殺害であった可能性もある)、その贖罪のために異国へと追放された。彼はティリュンス(Tiryns)やリュキア(Lycia)へと逃れ、各地の王の庇護を受けることになる。
2. ペガサスとの出会い
2.1 ペガサスの由来
ペガサスは、英雄ベレロフォンと切っても切り離せない存在である。神話によれば、ペガサスは怪物メデューサ(Medusa)がペルセウス(Perseus)によって討たれた際に、彼女の血から生まれたとされる。天馬であり、神々の使いとしても扱われた。
2.2 ペガサスを手に入れる方法
ベレロフォンがペガサスを得るためには、アテナ(Athena)またはポセイドン(Poseidon)の助けを借りたとされる。最も有名な話では、アテナが夢の中でベレロフォンに金の口輪を授け、これを使ってペガサスを手懐けることができたという。
3. キマイラ討伐
3.1 キマイラとは?
キマイラはリュキアに棲む怪物で、獅子の頭、山羊の胴体、蛇の尾を持つ恐るべき存在だった。この怪物は炎を吐き、周辺の村や土地を荒らし回っていた。
3.2 イオバテス王の試練
リュキア王イオバテス(Iobates)は、ベレロフォンをキマイラ退治へと送り込んだ。これは、彼を確実に死なせるための策略だったが、ベレロフォンは見事にこの試練を乗り越えた。
3.3 討伐の方法
ベレロフォンはペガサスに乗り、キマイラの火炎攻撃を避けながら、槍や弓で戦った。決定的な戦法としては、鉛を先端につけた槍をキマイラの喉へ突き刺し、怪物が炎を吐いた際に鉛が溶けて窒息させるというものだった。この機転により、彼はキマイラを討ち取ることに成功する。
4. さらなる冒険と栄光
4.1 戦争での勝利
キマイラ討伐後、イオバテス王はさらに難題を課した。
• ソリュモイ人(Solymi)との戦争
• アマゾン(Amazon)との戦い
いずれもベレロフォンはペガサスの力を借りて勝利を収めた。この功績により、彼はリュキア王の娘フィロノエ(Philonoë)と結婚し、王国の一部を与えられた。
4.2 神々への挑戦
ベレロフォンは次第に己の力を過信するようになり、ついにはオリンポス(Olympus)の神々のもとへ行こうと考えた。彼はペガサスに乗り、天へと昇ろうとした。
5. ベレロフォンの転落と最期
5.1 神々の怒り
ゼウス(Zeus)はこの行為を許さず、ペガサスにアブ(または雷)を送ってベレロフォンを地上へと突き落とした。
5.2 最期の姿
ベレロフォンは墜落によって重傷を負い、失意と孤独の中で余生を送ることになった。ある伝説では彼は盲目になり、荒野をさまよううちに死んだとされる。
6. ベレロフォンの神話の象徴性と影響
6.1 英雄の典型的な要素
ベレロフォンの物語には、以下のような英雄神話の典型的な要素が含まれる。
• 試練と成長:キマイラ討伐や戦争での勝利
• 神の助け:ペガサスを得る過程
• 栄光と驕り:成功を重ねたがゆえに過信し、転落する
6.2 他の神話との比較
• イカロス(Icarus)と同様に、「高く飛びすぎたために堕ちる」モチーフが見られる。
• ヘラクレス(Heracles)と並ぶ英雄だが、彼と異なり最期は悲劇的である。
• ペルセウスとの共通点もあり、ペガサスの誕生に関わる点が類似する。
6.3 文化への影響
ベレロフォンの物語は、古代ギリシャの美術や詩に登場するだけでなく、後世の文学や芸術にも影響を与えた。特にペガサスとの関係は、ファンタジー作品にも取り入れられている。
7. まとめ
ベレロフォンはギリシャ神話における英雄の一人であり、ペガサスを乗りこなし、キマイラを討伐したことで名を馳せた。しかし、彼の驕りがゼウスの怒りを買い、悲劇的な最期を迎えた。彼の物語は、英雄の成功と転落を描く典型的な神話の一例であり、現代の文学や文化にも多大な影響を与えている。

