タギツヒメ(多岐津姫命)は、日本神話に登場する宗像三女神(むなかたさんじょしん)の一柱です。
彼女は主に海の神、航海安全の守護神として崇められています。
また、自然の力を象徴し、特に水や川、海の流れを司る存在として重要視されています。
■ 宗像三女神とは?
宗像三女神は、海の守護神として知られる三柱の女神です。
• タキリビメ(多岐理毘売命)
• イチキシマヒメ(市杵島姫命)
• タギツヒメ(多岐津姫命)
彼女たちは、海上交通が重要だった古代日本において、船乗りや漁師、交易に関わる人々の厚い信仰を集めました。
■ タギツヒメの誕生
タギツヒメは、**アマテラス(天照大神)とスサノオ(須佐之男命)**の誓約(うけい)によって生まれた神です。
• 誓約の際、アマテラスがスサノオの剣を噛み砕いて、その息から三柱の女神が生まれました。
• その一柱がタギツヒメです。
三女神は、アマテラスの命により、海を守護する役割を担うことになりました。
■ 名前の由来
**「タギツヒメ」**の名前には以下のような意味があります。
• 「タギツ」 … 「瀧(たき)」「激流」を意味し、水が勢いよく流れる様子を表しています。
• 「ヒメ」 … 神聖な女性神を指します。
したがって、**「激しく流れる水を司る神」**という意味を持つと考えられます。
特に、川や海の急流を象徴し、その力を鎮める役割を担っていたとされます。
■ タギツヒメの役割と信仰
1. 海上交通・航海の守護神
• タギツヒメは、特に海を渡る人々の安全を守る神として信仰されました。
• 古代の海上交易において、船乗りたちは海神であるタギツヒメに航海の無事を祈願しました。
2. 水の神としての役割
• 急流や滝、川の流れを象徴する神としても信仰されており、水害や洪水を鎮めるための祈願も行われました。
3. 浄化と祓いの神
• 水が持つ浄化の力に由来し、タギツヒメは罪や穢れを祓う神としての役割も担っています。
• 神事や祭りにおいて、海や川の水を用いた禊(みそぎ)の儀式が行われる際には、タギツヒメへの祈りが捧げられました。
■ タギツヒメを祀る神社
1. 宗像大社 沖津宮(福岡県)
• タギツヒメは、宗像大社の沖津宮に鎮座しています。
• 沖ノ島に祀られており、この島全体が神域とされ、一般の立ち入りは許されていません。
• 沖津宮は、古代から航海の安全を祈る場所として信仰を集めてきました。
2. 宗像大社 辺津宮(福岡県)
• 宗像三女神を総合的に祀る宗像大社の辺津宮では、タギツヒメを含む三柱の神々が崇敬されています。
■ タギツヒメに関する神話エピソード
1. 海を守る使命
• アマテラスは、宗像三女神に「海の道を守るように」と命じました。
• その結果、タギツヒメは沖津宮に鎮座し、海上交通の安全を見守る役割を果たしました。
2. 神への捧げものと祈り
• 古代、航海を前にした人々はタギツヒメに対して海の幸や酒を捧げ、航海の無事を祈る儀式を行いました。
• 沖ノ島では、当時の祭祀に使われた銅鏡や勾玉などの奉納品が発見されており、国宝に指定されています。
■ 現代におけるタギツヒメ信仰
現代においても、タギツヒメは多くの場面で信仰されています。
• 航海安全:船舶関係者や漁師が無事を願って参拝します。
• 災害鎮護:水害や津波から守ってもらうために祈願します。
• 心身の浄化:禊や清めの儀式の際に祈りを捧げることもあります。
特に、海に囲まれた日本において、タギツヒメの存在は自然の脅威に対する畏敬の象徴とも言えるでしょう。
■ まとめ
タギツヒメは、日本神話における海と水を司る神であり、宗像三女神の一柱として、航海の安全や水の浄化を司る存在です。
その力は、海上交通を支えた古代日本人の信仰心を反映し、現代においても多くの神社で崇められています。
自然への畏敬の念を忘れず、海や川の恵みに感謝しながら生きる人々にとって、タギツヒメの神話は今なお重要な意味を持っているのです。

