エリニュス/Erinyes

エリニュスとは

エリニュス(ギリシア語: Ἐρινύες、ラテン語: Erinyes)は、ギリシア神話に登場する復讐の女神たちである。ローマ神話ではフリアエ(Furiae)とも呼ばれる。彼女たちは主に殺人や不義、特に親族殺しを犯した者に対して復讐を行う存在であり、古代ギリシアの宗教観や倫理観に深く結びついていた。

エリニュスの起源

エリニュスは、ウラノス(天)とガイア(大地)の間に生まれた存在である。神話によれば、クロノスが父ウラノスの生殖器を切り落とした際に、その血がガイアに落ち、そこからエリニュスが生まれたとされる。このため、彼女たちは「復讐の化身」としての性格を持ち、特に血族間の犯罪に対する罰を司る。

エリニュスの構成

エリニュスは通常三姉妹として描かれるが、その名は諸説ある。代表的な三柱は以下の通り。

  • アレクトー(Alecto): 「止まらぬ怒り」を意味し、罪人を容赦なく追い詰める。
  • メガイラ(Megaera): 「嫉妬する者」を意味し、不貞や裏切りを罰する。
  • テーシポネー(Tisiphone): 「殺人の復讐者」を意味し、殺人者に対して報復を行う。

彼女たちは地獄(タルタロス)の底に住むとされ、時に地上に現れて罪人を追い詰める。ギリシアの古典文学では、多くの英雄たちがエリニュスの呪いを受け、悲劇的な運命をたどることになる。

役割と象徴

エリニュスは、古代ギリシアの道徳的・宗教的観念において非常に重要な存在であった。彼女たちの主な役割は以下の通り。

1. 血族殺しの罰

エリニュスは特に血族殺しを重大な罪と見なし、犯した者に対して容赦なく復讐する。オレステスが母クリュタイムネストラを殺害した際、彼はエリニュスに追われ、逃亡生活を送ることになる。最終的にはアポロンとアテナの助けを得て罪を許されるが、この物語はギリシア悲劇『オレステイア』の中心的なテーマとなっている。

2. 不義や誓約違反の罰

エリニュスは単に血族殺しだけでなく、不義や誓約違反などの罪も裁く。特に、親子や夫婦の関係における裏切りには厳しい罰を下す。

3. 死者の復讐の代行

ギリシア神話では、正当な復讐が果たされない場合、死者の魂がエリニュスを召喚して復讐を果たすことがある。これにより、社会的な正義が保たれるという考え方があった。

文化的影響

エリニュスは、ギリシア悲劇や文学において重要な役割を果たしただけでなく、その後のヨーロッパの文化や宗教観にも影響を与えた。

1. ギリシア悲劇におけるエリニュス

エウリピデスやアイスキュロスの作品では、エリニュスが登場し、罪人を追い詰める場面が描かれる。特にアイスキュロスの『オレステイア』三部作では、エリニュスがオレステスを執拗に追い回す。

2. キリスト教的な影響

エリニュスの概念は、キリスト教における「地獄の責め苦」や「神の裁き」にも通じるものがある。ローマ時代以降、エリニュスはより道徳的な存在として解釈され、時には「慈悲深い者たち(エウメニデス)」と呼ばれることもあった。

3. 現代文化への影響

エリニュスのイメージは、文学、映画、ゲームなどの現代文化にも広く影響を与えている。復讐や正義の概念を象徴するキャラクターや存在として、様々な形で取り入れられている。

まとめ

エリニュスは、ギリシア神話における復讐の女神として、罪人を追い詰める恐ろしい存在であった。その起源はウラノスの血から生まれたとされ、特に血族殺しに対する復讐を司る。ギリシア悲劇や文学において重要な役割を果たし、現代文化にも影響を与えている。エリニュスの存在は、古代ギリシアの倫理観や正義の概念を象徴しており、今なお多くの作品で取り上げられている。

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